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2011年11月

2011年11月10日 (木)

【ミステリー】入手困難本のおすすめ度①

このブログのミステリーカテゴリーの読者の方には、コアなミステリーファンも多くいらっしゃるようです。そこで、現在、絶版等によって入手困難な作品のうち、私が既読の作品について、独断により、入手して読む価値があるかどうかを論じてみたいと思います。

最初は、年代別に紹介していこうと思いましたが、特に古典に属する作品は、長すぎて、入手はしたものの未読のものが多く(汗)、順不同とさせていただきます。

なお、入手困難度は、古書店やネットなどの流通度と価格から判断し、おすすめ度は、主観により判断させていただきます。

         

「誰が駒鳥を殺したか?」 ハリントン・ヘキスト

創元推理文庫(1960初版)/別冊宝石87号(1959)

入手困難度 ★★★★☆  おすすめ度 ★★★☆☆

ヘキストは、イーデン・フィルポッツの別名。
創元版は、古書店でもネットでもほとんど見かけることがなく、別冊宝石のほうがまだ入手しやすい。

かつて、ヴァン・ダインが、英国ミステリーBEST11に選んだこともあり、タイトルだけは知っているというファンが多いようである。タイトルのインパクトもあってか、「復刊ドットコム」でも復刊希望がきわめて多いのだが、約50年間にわたって絶版のままである。

このタイトルは、マザーグースの一節であるが、物語そのものはマザーグースとは関係ない。ただ、作中に、子守唄の一節であるとの記述があり、マザーグースからの引用であることは間違いない。

この作品は、人によって評価が分かれるのではないかと思われる。特に、「駒鳥」の渾名で呼ばれる人物に関して、共感できない人も多いのではないか。舞台設定そのものは、現代のテレビドラマにもありそうな話であるが、そこに殺人事件がからみ、そしてこの結末はちょっと・・・、という向きもあろう。

トリックそのものは奇抜であるし、伏線も張られていて、本格ミステリーとして及第点であるように思う。問題は、登場人物の性格と殺人の動機、そして結末にあり、これらが我が国の読者に受け入れられなかったがために、低評価されてしまったということではないか。

個人的には、入手して読んでみる価値は十分にあると思うが、入手困難度(値段の高さも含めて)を勘案すると、おすすめ度は中程度といったところか。

      

「オシリスの眼」 オースチン・フリーマン

早川書房(1951)/別冊宝石109号(1961)

入手困難度 ★★★☆☆  おすすめ度 ★☆☆☆☆

フリーマンのソーンダイク博士ものの長編である。
早川版はきわめて入手困難。抄訳ではあるが、別冊宝石のほうが無難。

1920年に、「新青年」創刊号に掲載されており、古くからわが国でも知られた作品で、戦前から終戦直後にはBEST10に挙げる識者が多かった作品である。
ところが、近年では、この作品を高く評価する人はいない。というのも、この作品のメイントリックは、当時においては奇想天外であったのだろうが、現代には通用しないものになってしまったからだ。

こうした事情から、今後この作品が復刻される可能性は低く、その意味での希少価値はあろうが、コレクター以外の、純粋にミステリーを読みたい人にはおすすめできない。

       

「百万長者の死」 G・D・H&M・コール

創元推理文庫(1959)/東京創元社世界推理小説全集(1956)/東都書房(1964)

入手困難度 ★★☆☆☆  おすすめ度 ★★☆☆☆

この作品は、なぜか文庫版のほうが入手しにくい。東都書房版は、これも絶版のノックス「三つの栓」が併載されているのでお得である。

この作品も、ヴァン・ダインのBEST11に選ばれており、江戸川乱歩も高い評価を与えているのだが、50年近く絶版状態が続いている。近年のランキングで名前が挙がることはなく、もはや過去帳入りしてしまったような扱いを受けている。

コール夫妻は、社会主義経済学者であるが、ミステリーも数多く手がけている。しかしながら、わが国では、邦訳も少なく、それも軒並み絶版となっており、新訳が出る気配はない。

主人公のウィルスン警視は、天才的な探偵ではなく、地道に捜査を続けるタイプであるが、これが作品のテンポの悪さにつながっているのであろうか。この作品が邦訳されて以降、アガサ・クリスティーなど、テンポのいい「現代的」な作品が次々と邦訳され、読者がそちらの方に流れていったということだろう。

また、この作品では、事件が起こった後も、さまざまな経済的謀略が描かれているが、これが現代の日本人には理解しがたいものであった。この作品の書評では、こういった部分が批判されているのを目にする。

さらに、この事件の結末が問題で、わが国では、「悪代官と越後屋は捕えられなければならない」のであり、「大岡越前は裁きの前に逃げ出してはならない」のである。(ネタバレを防ぐためこのようなたとえにした)
勧善懲悪を好む国民性には、この結末は受け入れられにくかったというべきであろう。

全般に、ミステリーとしても物足りなさを感じる作品であるが、古書としてはさほど高額ではない(文庫版を除く)ので、見つけたら買ってみる手はあるか、といったところか。

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2011年11月 9日 (水)

【駅弁】駅弁を熱く語るこの一冊

このようなタイトルにしましたが、駅弁を熱く語るのは私ではありません。

神保町に行ってきました。この街は「本の街」として有名ですが、税理士試験などの受験校もあり、学生時代からよく通った街でもあります。
当時からある、行列ができる洋食屋「キッチン南海」で昼食を摂り、目的の古本あさりに行ったのですが、その話はまたの機会に。

鉄ちゃんの聖地・書泉グランデの6階をのぞいてみると、ありました。目的の本が。

ウェブサイト「駅弁の小窓」の開設者である、上ちゃんこと上杉剛嗣さんの2冊目の著書「駅弁読本」です。先日の「日刊ゲンダイ」にも紹介されていたので、ご覧になった方も多いと思います。

上杉さんは、すでに2年余前に、「駅弁掛け紙ものがたり」を出版していますが、前作は、駅弁の掛け紙にスポットを当てたものでしたが、今作は、現役の駅弁紹介に主眼が置かれています。

冒頭の「駅弁学のスゝメ」では、上杉さんの40年間にわたる駅弁人生が熱く語られています。駅弁との出会い、日本の文化としての駅弁から駅弁の将来像まで熱く語られており、単に駅弁を紹介するだけではない著者の意図が伝わってきます。

駅弁紹介では、単に有名駅弁を紹介する本とは一線を画し、さまざまな視点からお薦めできる駅弁を掲載しています。

サイトではおなじみの「駅弁行脚」が、数ページにわたって掲載されています。

ところで、この本で気になった一節があります。

四国の駅弁を紹介するページで、「かつて、“駅弁不毛の地”と称された四国島内・・・」という一文がありますが、この“駅弁不毛の地”というのは、私が「駅弁の小窓」に幾度となく書き込んだセリフであります。他にも同様なことを言われているのかも知れませんが、私のセリフを引用していただいたのなら光栄ですね。

今作では、上杉さんの顔写真も載っています。抱えているのは、日本一の駅弁・宮島口駅「あなご飯」です。

私のような、単なる駅弁ファンとは違う、駅弁に対する情熱が詰まった本とでもいうべきでしょう。ぜひとも、手にとっていただきたい一冊です。

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